1.会社における人が育つ環境と仕組みとは

個人で成果が出せるかは"その人の持つ意欲・行動など保有能力による"ところが大きいのは事実ですが 【本来の能力】を十分に発揮できているかどうかは"会社の環境や仕組みのあり方"が大きく影響します。
会社がやるべきことで大事なのは「個人に努力や成長を求め、その結果が良かった・悪かった」 と単純に評価するだけではなく「人が育つ環境と仕組み=条件づくり」です。

市場の労働力不足、特に若年労働力の減少は今後も続き、人員の新規確保での充足は更に難しくなります。
またベテランの技能継承も進め、会社の固有ノウハウを確立(維持)させていく課題もあります。
「採用による人員の充足」から「既存人員の育成⇒定着⇒戦力化」の取組みへ重点をシフトさせていく必要性が高まっています。
そのためには「人が育つ条件=環境と仕組み」を整えていくべきであり、 全体の視点から「育成環境の整備・システム構築」を考える必要があります。

以下にその全体図を示します。



職場風土・職場環境
職場風土は"職場の文化や習慣"、職場環境は"労働環境"(職場スペース・働きやすさ・人間関係 など)を指します。
これらは【職場力のベース】となるものです。
職場の特徴を示す「職場の文化・習慣」の例として 「ルールを守る」「時間を守る」「約束を守る」「整理・整頓できている」「問題にすぐ気づく」「処置が早い」などがあります。
これは職場での従業員の行動の特徴・傾向であり、会社ごと・職場ごとでその状態は異なります。
"(普通に)できる"もしくは"なかなかできない"や"まったくやらない・守れない"ということが 「職場の傾向的なパターンとして出る」ということです。
各職場に所属する人の考え方・意識レベルが異なれば、その結果となる行動に差が出てきます。
良い習慣・文化が根づいている職場では"正しい考え方のもと、良い行動で、期待する成果"が出ます。
その反対に「習慣・文化に問題がある職場」では、考え方・意識から成果へのピントがなかなか合いません。 本来の目的・目標が適切に定められず、行動不足が起こります。当然ながら成果も満足レベルには届きません。
メーカーなどモノづくりの現場ではその傾向が顕著に現われます。
「現場での問題解決ができる」職場があれば、「現場での問題解決がなかなか進まず、改善できない」職場があり、その差は歴然です。
職場そのものに問題があれば、新規人材を受け入れてもなかなか育ちません。職場のマイナスの影響を受けて悪い習慣が身に付くか、 当人が働きにくいと感じ、最悪なケースは離職につながってしまいます。
職場の成果はマンパワーに頼るところも大きいが故に、職場風土・環境に問題を抱える会社は実際に多いと感じます。
そこで問題のある会社・職場が改善していくためにやるべき事は
「文化・習慣を変えていく努力をする」「そのために仕組み構築・人材育成などの施策を実行する」などです。
マネジメント
マネジメントの意味は「会社の成果に向けてヒト・モノ・カネ・情報を効果的に活用する」です。
人・モノ・カネ・情報を最大限に活用し、成果を出すためには、どのような施策(仕組み・制度の構築、人材育成)を講じるかと いうことを検討するところから始まります。
また、それを実行・改善するサイクル(PDCA)を確立することが大事です。
マネジメントする上で大前提となるのは、
①組織の単位を明確にし、適切な役割・責任・権限を与える
②組織の目的・目標を明確にし、それをメンバーに伝え、共有する=組織が同じ目的・目標を持つ(責任者→職場→個人)
③組織の成果に向けて組織を動かすための仕組み・仕掛けをつくり、その運用成果を評価する ※必要に応じて見直す
(目標管理制度、人事評価システム、現場VM など)
などです。 ①~③の前提条件が揃えば、後はマネージャーの成果追求へのアクションのレベルを高める ということになります。

①の"役割・責任は適切に与えても、権限の範囲が共通認識されていない場合"は当人のパフォーマンスに制約がかかっていき、成果が出ません。
リーダーシップが発揮レベルを問題とする会社は「役割・責任・権限の再確認・共通認識」をする必要があるでしょう。
教育・OJT
人材育成の手段として、一般的に選択されるのが多いのは、「OJT」「Off-JT」「自己啓発」などです。
またそれを支える制度との連動があれば、人材育成の仕組みとしてより有効に機能します。
※詳細は後述します。
個人
「人を育て全体と個人の成果につなげる」ことが、会社が一番に期待していることです。
職場での人材育成は、責任者・リーダーに委ねられています。
ただ、よくあるケースでみていくと、
「OJTによる人材育成を基本としているが、環境整備の不足によりなかなか育成が進まない」
「現場に委ねているだけで、実態は現場教育に十分に時間をかけていない」ということがあります。 "結果は個人ありき、実際はどうなるか分からない状態"で"育成が上手くいくかどうかは不確実である"状態です。

根本から見直して個の育成成果を狙っていくなら、
①職場風土・職場環境を改善 ②マネジメント機能のレベルアップ ③教育・OJTの仕組み確立 ④個人の成果プロセスの確立
①~④の関連を考える必要があります。


モノの見方・考え方=価値観
個人が持つ「モノの見方・考え方」と会社の価値観(大事にしていること)を一致させるこで、狙いを定めた活動成果が期待できます。
ここが揃っていないと、会社の期待と個人の目的・目標への意識・行動のピントが合っていきません。
会社・個人で価値判断基準(良い・悪いの判断基準)を共有していくことが大事であり、 考え方・基準のすり合わせは定期的に行い、相互確認していくことがポイントです。
それを進めるツールとなるのは、【経営理念】【行動指針】などです。
また、会議・ミーティングなども考え方・基準を合わせる場です。
現状でTOPの期待値に従業員の成果が伴っていないなら
"その期待値や基準が明確にされていない""十分に理解されていない" 可能性が高いため、すり合わせの機会を見直す事が必要となります。
意識・意欲
意識・意欲を高めるには、まず"会社での自身の存在価値を当人が理解できているか"を考える必要があります。
また"意識・意欲が上がらない原因=障害"を探り、目を向けていくのもポイントです。

会社がやるべきことは、
①存在価値を理解させる=役割・責任・権限を与える
②意識・意欲低下の原因となる障害を取り除くサポート
となります。
上記2点への対処が不明確でモチベーションが低いということには多いです。
①のサポート策としては、役割・責任・権限の明確化、目標の明確化、部署の方針・目標の明確化=チーム目標における役割の設定 などです。
②については、個人面談などフォロー・サポートするのが有効です。個人への動機づけの機会となります。
行動
行動レベルを高めるには
〇 価値判断基準が共有されていること
〇 目標が明確になっていること
〇 個人への動機づけができていること
が前提条件となります。後は組織単位の運営方針・目標、個人目標に向けて実行することに力を注いでいくことになります。
この場面では上司からのタイミングをはかった【アドバイス・サポート】ができれば、 育成面からみても「行動基準・成果基準の理解度を高める」ことにつながります。
成果
成果については、その機会ごとに必ず評価することが大事です。また成果不足や失敗があれば、アドバイスが必要です。 ここのやり方次第で、個人の次へのアクション・改善レベルアップが変化していきます。評価は育成の機会です。
注意点として、個人に対する評価のやり方を間違うと(評価の観点やタイミングを間違える等)、モチベーションダウンや問題行動につながってしまいます。

2.人材育成の枠組み

「人材育成の枠組み」の観点で見ると、2つのアプローチから考える必要があります。


人材育成の手段として、一般的に選択されるのが多いのは、「OJT」「Off-JT」「自己啓発」などです。
"会社でやる人材育成"と言えば、これらをイメージする方が多いと思います。これらは【狭義の人材育成】を指します。

OJT
On the Job Training(職場内訓練)
人材育成の手法として、よく選択されるのはOJTです。実務の実践を通じて教育を行うものです。
"現場が主体となり、現場で実施される人材育成"を総称してOJTと呼びます。個人のスキルアップの過程で、 現場体験の内容が一番影響します。
OJTには、①プログラム化されたカリキュラム ②そうでないもの があります。
会社でよく言われるOJTは "②そうでないもの=現場教育担当者の感覚、教え方の技量、裁量の範囲で実施"されるケースが多いのが現実です。
いわゆる名ばかりの人材育成です。そうなると"人材育成ができるかどうかは不確実"となってきます。
人がなかなか育たない会社ほど、"教育はOJTだけ=実態は現場に委ねるだけ"というのが多いと感じます。
OJTを本当に機能させるには、①プログラム化されたカリキュラム をつくる必要があります。
Off-JT
Off the Job Training(職場外訓練)
Off-JTは、業務の実践の場以外に会社で育成の機会をつくる「集合教育」を指し、新入社員研修やリーダー研修 などが挙げられます。
また専門知識を高める「スキルアップ研修」や、個人のキャリア形成を支援する「キャリアプランニング研修」などもあります。

〔参考〕人材育成の考え方 コンサルタントの視点から会社をみて考えること
自己啓発
自己啓発とは、会社が準備した教育の枠組みに頼らず、社員自らスキルの習得・向上をはかることです。
外部セミナーを受講する、ビジネス書籍を読む、などがこれに該当します。
個人の希望により、自己啓発に対して、時間的・費用的なサポートをする会社もあります。

3つの選択肢を上手く活用し、効率的に人材育成を進めていくのが有効です。
更に言えば、社員のレベルアップのステージごとに育成の重点ポイントも変わるため、それに対応していけるのが理想です。


【狭義の人材育成】に対して、【広義の人材育成】というものがあります。
会社における育成の環境づくり・仕組み構築に通じるものです。
「ジョブローテーション制度」「人事評価制度」「目標管理制度」「メンター制度」などがそれに該当します。

ジョブローテーション制度
ジョブローテーションとは、従業員の能力開発のために計画に基づいて「定期的な異動や職務変更を行うこと」です。
多くの領域で経験を積んだ幹部人材を自社内で育てるために、様々な部署を経験させるのが有効とされました。
長期的な視点による社員の能力開発が主な目的ですが、新入社員を対象とするのか、将来の幹部候補人材を対象にするのかで、そのポイントはやや異なります。
新入社員の場合は、入社間もない社員に対してはまず、職場をローテーションさせる過程で適性を判断するために実施されます。
会社を背負っていく立場が期待される中堅社員に対しては、全社を俯瞰する目線を身につけさせるためにジョブローテーションが行われます。
経営人材に必要な、企業活動を包括的な視野でみる力を養うため、1〜3年ほど時間をかけて複数の部署を巡り、ゼネラリストとして幅広いスキルの開発を目指します。


【ジョブローテーションのメリット・デメリット】
メリット
〇会社を様々な視点から横断的に見ることができるようになる
〇部署間のコミュニケーション活性化につながる
〇業務の属人化を防ぐ
〇新入社員の入社後のミスマッチを防ぐ
デメリット
〇専門性の高い人材育成につながりにくい
〇本人の志望とミスマッチする可能性がある
〇人事評価や給与決定に影響が出る

人材の流動化、スペシャリストの価値向上、人員コスト圧縮→職場の省人化 などがあり、 ジョブローテーション制度は実施しにくくなっている実情もありますが、 会社の将来の組織づくりを考えれば、会社全体を見ていけるような"ゼネラリスト人材"の育成も必要となります。
人事評価制度
「人事評価制度」は、評価に基づき社員を育成し、生産性の向上をはかるため、企業の目標達成や業績のアップに繋げるためのシステムです。
社員が持つ能力やスキルを評価するだけでなく、会社への貢献度を加味して判断することが重要です。 評価の主なポイントは「能力評価」「業績評価」「情意評価」です。
更には「企業のビジョンや経営方針に沿った目標の明示」「人材の最適な配置や処遇の決定」「社員の人材育成」に活用されます。
方針管理システム
方針管理とは「経営方針に基づき、部署単位の方針を定め、それらを効率的に達成するために行う活動を支える管理」です。
"経営全般・部署で重点となる目標に対し、どのような指針(方針)で進めていくのかを定める"ことで組織活動の焦点を定めることができます。
組織と個人のベクトルを揃える上で"方針を定め運用していくこと"は有効です。
目標管理制度
あらかじめ社員が自主的に目標を決めて会社と認識を共有し、管理していく方法です。
設定する目標はなるべく具体的にし、到達するためのプロセスも具体的に定めることも大切です。
社員と企業双方の目標が同じベクトルであるかを常に確認しながら、社員が企業に貢献していると認識すれば、さらに意欲を高めることが可能なのです。
メンター制度
メンター制度とは、先輩社員に仕事のことや人間関係を相談できる制度です。
新人の不安や悩みに先輩社員が相談に乗り、サポートをして"精神的な支柱"になることが求められます。
業務はもちろんのこと、コミュニケーションの活性化を促し、人として成長するサポートをする点に重きを置いているところに特徴があります。

"人を育て、会社の力を上げる"には、 職場風土・環境づくり、仕組み・人材育成を効果的に組み合わせることで「人が育つ条件」が整い、それが現実のものとなります。

シーアークスは企業の人材育成の環境づくり・仕組みづくりをサポートしています。まずはご相談から