どうやって組織の革新につなげるのか?
それは「経営品質」を上げていくことにつきる。
製品やサービスの「品質」は『決まったことが、決まった規格・品質で「できている」「できていない」ということを見て評価すること』を指す。
製品で言えば、「キズがない」「説明書どおりに正しく動く」「他社製品と比較しても機能が充実し便利」など。
サービスで言えば、「顧客が満足できるようなレベルのサービスが提供され、その質が高い」などである。
それに対して、「経営品質」とは『目的を実現するために行っていることと、さらに良くするために行っていることについての「プロセスを見る」こと』を指す。
「経営品質」は目的を実現できる”組織の状態”を意味している。これをいかにレベルの高い状態として維持継続するかが問われる。
そのための最大のポイントが「組織運営プロセスの質」にある。
会社の組織運営プロセスの質が良ければ、必ず成果レベルは上がる。
もし成果がなかなか上がらない場合、事業そのものの問題もあるが、成果を出すためのプロセスに問題を抱えているケースが多い。
ある会社の事例からみていく。
何年にも渡り、慢性的ともいえる低収益状態にあった会社がある。
当初は事業環境そのものが悪化したことを要因としていた。
しかしながら、よくよくその会社を調べると、組織そのものに問題があることが分かった。
コミュニケーションの質、改善活動の徹底度、予防処置の仕組み、チーム連携などすべてに問題があった。
人間でいうところの血行不良のような状態に会社が陥っていたのである。
血行不良であると、当然ながら機能低下を引き起こし、最終的には死につながるかもしれない。
そのような状態から問題解決のための重点テーマを設定し、組織そのものにメスを入れた改善活動をした結果、最終的に高収益化した。
以前の状態が嘘のように、組織全体にも活気が出るようになった。
「経営品質」の考え方とは、『経営の状態をもっと高めよう=価値革新を生み出す組織の状態を高めよう』ということを指す。
そのための取組みとして「経営品質向上プログラム」が有効になってくる。
「経営品質向上プログラム」とは、アメリカのマルコム・ボルドリッジ賞を範とした「顧客価値」を中心とする経営のあり方を示し、それに従って自己評価(セルフアセスメント)する手法である。
「経営品質向上プログラム」は、常に変化する顧客価値を重視する。
絶えず高い価値を実現するための革新を生み出し続け、「卓越した経営」の実現を目的としている。
ここで言う「卓越した経営」とは、次の2点がポイントとなる。
1.自社のためだけではなく、市場における存在価値を見極め、実現する
2.経営における自社が到達すべき最高の状態(価値観・目的を明らかにした状態)を目指す
すなわち、経営の価値観を「価値前提の経営」にシフトしなければならない。
「価値前提の経営」とは、“どのような組織であるべきかという価値・目的を明確にし、理想的な姿を描き、現状とのギャップを埋めるために改革を進める経営”である。
それに対して “価値や目的を明確にせずに、目の前の出来事にその場しのぎで対応したり、その時の都合で対応したりする”ご都合主義の経営”を「事実前提の経営」と呼ぶ。言い換えれば、”場当たり的な経営”である。
「事実前提の経営」では、目の前の対処に力を傾け、その場の問題解決はできていくだろう。
ただ「あるべき姿」を指標にして、将来のために改善しているわけではない。
環境変化を想定することなく、会社の行く末を見据えず、結果として会社が何処にも向かっていかない。
最悪のケースを想定すると、気がついたら何もできなくなるまで会社の状態が悪くなってしまうこともあり得る。
「価値前提の経営」にシフトし、「経営品質向上」をはかっていくことが組織が革新し、生き残る道である。