No.198 新人育成からみた会社の風土を良くするポイント

●新人の離職率の現状と会社が考えること

毎年4月に新卒の新入社員が入社し、そろそろ1か月が経過する。
少しづつ会社環境や仕事の理解が進んでいく頃である。

期待されて入社した新人はまだ何にも染まっておらず、”無限の可能性”を秘めている。
新人は白にも黒にもなる。「活かすも殺すも会社次第」というのは今も昔も変わらない。

今後の若年労働力の減少を考えれば、会社としては新人をキチンと教育して戦力にしていかなければいけない。

「新人の3年以内・平均離職率」の例年平均データを見ると、大卒で約3割、高卒で約5割、中途入社で約7割 である。(厚生労働省・統計)

データ上では離職は一定レベルで必ず起こることだ。
離職理由の上位は「給与への不満、仕事のストレス、将来性・安定性への不安」など個々で様々だが、総じると「理想と現実のギャップによる離職」ということが見えてくる。

世の中が複雑になっていることで、以前よりも”モラトリアム=自分に対する考え方が定まっていない”という新人が多くなっているのも事実であり、それも離職が増える理由である。モラトリアムの人は、”離職という結論を簡単に出したがる”傾向にある。

ただ、すべての会社がデータ通りかと言うと、そうではない。
入社3年経過しても離職はほとんどなく、新人の戦力化が当たり前にできている会社もある。

離職する新人の思考にも原因はあるが、離職率が高い会社の実態を探ると、

・新人が自分の範疇で勝手に理想を描いて、現実とのギャップを感じ、勝手に離職する。
→会社は後追い対応に終始するだけ、実際は何もできていない。

・会社全体に新人への指導方法の一貫した考え方がない。
→新人の不安を解消できないまま、時間のみが経過する。

といった「会社の新人への指導の考え方・方法の確立不足」という環境面の問題を原因とするケースも多い。

これを踏まえると、会社が新人に対して、

基本的な考え方と現実をキチンと教えて理解させ、ギャップを感じたとしても確実にフォローする

が指導上でやるべき重点ポイントである。

新人・初年度は、”仕事に対する考え方の基礎”を養い、”仕事のやり方の基本”を習得する期間である。

「仕事で通用する一人前のスキル」を習得させることは大事だが、「仕事を続けていくための考え方の基礎」も身につけさせないといけない。

●新人指導担当が念頭に置くこと

新人にとって、初年度からすでに「成長へのわかれ道」が潜んでいる。間違った道へ進まないよう気をつける必要がある。

新人が伸びるためには、まずは基礎能力を高めさせないといけない。

そのためには、
「最初に教えてもらう人が誰で、仕事人としての基礎をどう養うか」は大きなポイントだ。
大事なことをキチンと教えてくれる人に出会えれば良いが、そうでないと本人にとっては不幸である。

ということを、最初に教える人は肝に命じて、責任を持って新人指導にあたらないといけない。

●指導において大事にすべきポイント、大事にできないと会社はどうなるのか

仕事の「能力の構造」を考えてみる。 ※これは新人に限ったモノではない。
「能力の構造」は、以下の様に表すことができる。

<能力> = 【①知識】 × 【②技能】 × 【③態度】

①知識・②技能はどの会社でも仕事の基本スキルとして養わさせる。
しかし、新人の初年度で大事なのは、③態度能力 を高めさせることである。

ここが弱い人は何を教えてもほぼダメである。
例えば、いくら①②を高めても、③がゼロなら新人が望まれる方向で成長することはないということである。
態度能力に対する教育をキチンとやり切れていないケースが増えていると感じる。

態度能力を高めさせる上で、必ず教えるべき3つのポイントがある。

①必ず返事をさせる(挨拶も含む)
②整理整頓の基本とその本質を教える
③感謝すること、それを相手に示すことを教える

上記は、仕事の基本として根源的な行動のポイントである。新人にはこの3点のみキチンと教えるだけで、しばらくは伸びていく。ここに仕事の本質があるからだ。

表面的なコトのみ教え、その本質を教えない会社が多くなっている。
仕事の本質を大事にしない会社、そういう会社では上の3点を大事にしていないケースが多い。
そもそも先輩社員が疎かにしてやらないことを、新人がやるはずがない。

“悪い流れが定着してしまっている会社”が、良くなることは無い。

3点を新人にキチンと教えない会社が、終局的にどういう状態になるか、風土がどうなるか。

・一方通行のコミュニケーションが多く、情報発信した人へのフィードバックが極端に少ない = 組織で本当に必要とされるコミュニケーションができない。

・会社のモノや情報が整理できない、判断や優先順位づけなどができない。”考え方の整理整頓”ができる人が少なく、まとまらない。

・相手への敬意が薄く、人を大事にしない。→会社・組織が表面的で希薄な人間関係になる。

これは自分がコンサルの現場で見てきた会社の実態である。
※この段階からコンサルがスタートすることが多い。

こうなると、会社・組織は完全に「不活性」で、業績を上げることが難しくなっていく。

絶対に人の育成・指導を疎かにしてはいけない。

●新人指導を風土づくりの機会とする

新人の指導に戻る。
もし上記のような会社で、新人が働くとしたら、それはかなり不幸なことである。ただ現実には増えている。
先輩社員など上の人間が手本となり、大事なことを示せなければ、新人を育てるのはまずムリだ。離職率が悪くても、改善は進まないだろう。

“新人を育成すること”は”会社の風土をより良いモノにする、刷新する”機会と捉えないといけない。
新人がまともに育ち、会社の戦力が上がる会社は、人を育てる考え方と方法論が定まっており、その環境が整っていると言える。

その考えをつくり、キチンと環境整備に取り組むことで、”人を活かせる良い風土の会社”が実現することだろう。

株式会社シーアークスHP