No.220 暗黙知の形式知化、技能継承

「暗黙知を形式知に変える教育」を継続的に実施してきました。
※メーカー・教育、メーカー系商社・教育、自動車メーカー協同組合・教育、技術者養成機関・講座
各社の共通課題であるため、毎回・ほぼ満員の状態です。

教育の形式は「①講義による基本知識のインプット ②実習を通じた課題・対応策のアウトプット」であり、会社の課題解決に向けた実践的な内容です。
参加者の実習の状況をみていくと、それぞれの会社の抱える問題点・課題がよく分かります。教育内で個別アドバイスも行っています。

検討課題に上がるケースが多いのは「技能継承」です。
ISO品質管理の仕組みをキチンと運用している会社であれば、基本作業および技能の領域は標準書・手順書により”形式知化”しています。
しかしながら「特定の仕事、固有ノウハウに通じる技能」は多岐に渡り、その形式知化・継承は十分では無く、いまだ各社の共通課題です。

■ 組織内に暗黙知が増えていくプロセス

何故、そのような状況になるのか?
各社ケースに共通して見られることは、
”仕事ができる人が評価→重用され、仕事量および経験値が集約される”です。
理由は、その方が”確実に結果が得られるから”です。
当たり前の事ではありますが、先々を考えるとデメリットでもあります。
”成果プロセスの共有”で情報の蓄積はできますが、技能習得が進む訳ではありません。
これが”特定の人しか担当できない=組織内に暗黙知が増えていくプロセス”です。

■ ベテランの優位性は何か?

経験豊富なベテランには、様々な「知識×スキル×経験=情報」があり、仕事を上手く進めることができます。

本来「知識×スキル×経験=情報」は、
個人が特定の仕事に長く従事するほど蓄積され、それが”他者との差=優位性”になります。
ベテランには「知識×スキル×経験=情報」があるから、
「正確にできる」「早くできる」「様々なコトに対応できる」=仕事ができるのは”当然の結果”です。

ベテランの優位性とは何か? それを集約した表現にすると、

(1)基本技量が高く処理スピードが速い
(2)作業基準がある ※作業のカン・コツ・ツボ
(3)固有情報があり、探す・調べる時間が少ない
(4)難易度が高いケースにも経験則で対応できる ※最適解を出せる
(5)不具合・トラブルにも対処できる

「技能継承」を突き詰めて考えると「ベテランと新人の作業のやり方の違い」につながります。
”その違いを明らかにする→形式知化が可能”ということになります。

■ 「形式知化」へのハードル

しかしながら、「形式知化」には、組織のハードルがあります。

(1)特定の業務・作業の形式知化の意義・目的が定めらるか
(2)暗黙知の要素・ポイントを言語化=形式知化できるか ※言語化できる人がいるか
(3)個人の存在価値、成果主義との関連性をどうするか

これらをクリアすることが必要条件です。

■ 「形式知化、技能継承ができる会社」になるポイント

”技能継承が上手くできる会社、人材を活用できる会社”の究極の姿は、
「新人の早期戦力化、パート・アルバイトの戦力化ができる会社」だと思います。
このような会社では、“あらゆる仕事が形式知化”され、業務フロー、作業基準、標準作業書などが整っています。
その状態にしないと、組織や仕事が動いていきません。

一方で、組織内で以下の共通認識が根づいている会社は厳しいです。
・新人が一人前になるには数年はかかる(のが当たり前)
・パート・アルバイトは補助作業のみを担当する(のが当たり前)

もし、このような考え方が”社内常識”になっている会社は、
この認識・前提から変える必要があります。

これから、総人口減少→労働人口減少がどんどん進みます。
〇 総人口の減少
〔2022年〕1億2,322万人→〔2048年予測〕9,900万人
〇 労働人口(15歳以上就業者)の減少
〔2022年〕6,902万人→〔2040年予測〕5,200万人
No.213 需要×市場の変化 ビジネスとの関わり

“人材活用ができる会社、そうでない会社の差”は、より広がる、会社ごとの明暗はハッキリと分かれていく と思われます。

また、世の中の変化のスピードも今以上に速くなっていくでしょう。
IT自動化により人間の作業の移管も進むはずですが、
「形式知化、技能継承」は、その前提条件になります。

あらためて「暗黙知の形式知化、技能継承」は、企業を存続させる重要テーマです。

■ 株式会社シーアークス