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No.214 取締役とは、その要件 経営トップの責任

会社の業績向上に関連する要素は、
(1)「市場 × 事業」の状態
(2) 経営トップ・取締役のパフォーマンス
(3) 経営システムのレベル
(4) 組織・人材の充実度
(5) 業務の遂行力

に集約されると考えています。

今回は「取締役とは、その要件 経営トップの責任」について述べます。

A社の社長から「取締役の処遇」について相談を受けました。
A社へのアドバイス・助言は後述します。

■ 取締役とは、その要件

経営全般の責任は、経営トップにあります。
しかし、実際は経営トップだけでは手が足りず、すべてをカバーする事はできません。
そのため「取締役の任命」が必要となります。

そもそもな話として、
取締役とは、管理職のように「定められた範囲の仕事を管理する人」ではありません。

自分は、取締役とは「以下のような人であるべき」と考えています。

(1)有限責任があり、経営側の立場
(社員側の立場ではない。保身や打算が無い)

(2)会社の業績向上のため、経営全般の範囲に関与する、経営トップの補佐役

(3)取締役として、事業範囲 or 業務範囲で 固有の責任、固有のミッションがある

経営トップは、“上記(1)~(3)について、現取締役はどうなのか、そのパフォーマンスを評価すべき” と考えています。
※パフォーマンスは関係なく「そのまま取締役の立場は継続」というケースは意外と多いです。

■ 取締役を評価する目的・理由

その理由は、取締役は「経営トップの代行者として会社の業績に大きく関わる人」だからです。もしくは、そうでなければいけません。

仮に、経営トップが会社の正しい方向・計画を定めることができたとしても、
補佐役たる取締役が機能しないと、計画推進の過程で問題が出てきます。

取締役自身の十分な認識・能力・意欲があるかどうか、が大事なポイントです。

経営トップが取締役を評価した場合、上記(1)〜(3)について「何らかの不足や疑義」を感じるなら、
その人は取締役としての
■ 要件を備えていない
■ パフォーマンス不足

と思われます。
中には「認識が甘い」「そもそも、取締役としての責任範囲がアイマイ」というケースもあります。

取締役のパフォーマンスへの評価 について 妥協は禁物 です。
経営トップが妥協した時点で「只の惰性の関係」に変わります。
しかしながら、中小規模の会社では、妥協のケースはよく見られます。
なぜそうなるのか。
理由は「親族だから」「後継者だから」「過去の功績があるから」など。
「中小企業の規模・レベルのまま」なのは、実はこの点が原因 だったりします。

■ 経営バランスの重要性

さて、A社へのアドバイス・助言の内容ですが「取締役の退任、相談役としたらどうか」としました。
理由は「(過去の功績はあるが)取締役として既に機能しておらず、経営バランスを欠く存在となっていた」からです。

経営体制をつくる上で「攻めと守りのバランス」は重要ポイントです。
攻めだけでもダメ、守りだけでもダメ、両方のバランスをとることが大事です。

例えば、事業単位・業務単位の取締役は1名が基本です。それを2名にしてしまうと「双頭の竜」の状態になり、関係する従業員は混乱します。こうなると、組織自体が機能しなくなる場合もあります。※実際にあったケースです。
また、事業責任者が不在だと計画策定や強化が上手くいきません。
経営体制のバランスを欠くと、会社は思うように成果が出せなくなります。

もし「責任範囲がアイマイな取締役」がいたら、高確率で全体のバランスを崩す存在となります。
※これも過去のコンサル先でありました。
本来なら、あり得ない事です。
ちなみに、その取締役は「親族」でした。

■ 取締役の任命に関する問題ケース

中小規模の会社では、親族を取締役に任命する事は比較的・多いです。
理由の多くは、取締役人材の選択肢が無いためです。
これについて否定する訳ではありません。
より近い立場で経営トップを支えることができるという、プラスの面もあります。よくあるのは、資金管理を担うケースです。

ここからは、問題ケースです。

経営トップが「会社の業績向上・規模拡大」を考えたとき、「取締役の経験値・能力・パフォーマンスの不足」が大きなネックとなる事があります。
これは、会社の成長レベルに対し、取締役の力量が不足している ケースです。
この状況になると、経営トップはかなり悩む事になります。

また、役員数が会社の規模と釣り合わないケースもあります。B社は年商5億に対し「社長を含めて役員が5人」もいました。明らかに役員の頭数が多過ぎです。役員の半数は機能していません。いわゆる「名ばかり取締役」です。

本来、年商10億レベルまでの会社なら、社長以外の取締役は「多くても2名」で十分です。
それ以上の企業規模では「成長レベル×事業の在り方でバランスをとる」「経営機能を強化する」考え方で、必要に応じ、取締役を任命するのが基本です。

会社が続けば、成長すれば、取締役の交代が必要 となる場合があります。
ただ「前の取締役が退任せず、新たな取締役が追加される」なんてのはナンセンスです。無意味に頭数が多いと、経営効率を下げるだけです。

取締役の任期は、通常は「2年」です。※監査役は4年。取締役の任期が近づいたら、当人の成果レベルを確認し「任期の延長 or 退任」とします。
「親族だから」「長年の功労者だから」を、取締役の継続の理由とするのは、まったく意味はありません。
非公開会社の場合のみ「最長10年」と規定する事もできます。

■ 経営トップの責任

(1)取締役に任命する事そのものが大事なのか

(2)取締役としての 実際のパフォーマンスが大事なのか

会社の先々を考え、取締役の評価・処遇の意味と現実を考える事、それが経営トップの責任 です。

▶ 株式会社シーアークス