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No.213 需要×市場の変化 ビジネスとの関わり

コロナ感染がいまだ収まりません。状況が長引くほど、需要や市場への直接・間接の両面の影響が大きくなります。どうやら、まだ時間がかかりそうですが、1日でも早く終息してほしいです。

今回は、需要と市場の変化、ビジネスとの関わりについて、自分の立場・観点で理解していることを述べていきます。

■ 需要と市場とその影響

市場で最も大事なのは「需要」です。
「需要の総量=各商売の総ボリューム」です。
景気のよいときは、需要は増大します。その逆なら需要は減少します。

需要は「世の中で必要とされているかどうか」を示すモノであり、世に流通している、材料(金属、資材、油など)、製品(機械、家電、自動車 等)、商品(食品、生活用品 等)、サービスなど多岐に渡っています。
需要の中で、細分化・分野ごとに市場が形成されます。

大前提として、需要は人口に比例しています。
例えば、内需主導型のフィリピンのような国なら、人口増減が需要にストレートに比例します。
その一方で、海外貿易が活発、海外観光客が多いなど、外需が得られる国では、人口増減と完全には比例せず、異なった需要の動きになります。

また、社会情勢の変化、技術・サービスの変化、消費者ニーズの変化、政治の動向にも大きく影響を受けます。需要は、様々な環境変化の影響ですぐに増減します。
その変化の様子は生き物のようでもあります。

■ 市場規模の推移

最初はよく売れていても、気が付いたら、、、 となっていることがあります。
どんな商品・サービスにも、寿命があります。

上記は「プロダクトライフサイクル」です。市場規模とその推移・関連を示すモノです。


【導入期】
新しい市場は、最初の規模は小さく、競争相手はほぼいません。
事業者は、市場として伸びる可能性があると判断できれば、資源を更に投入していきます。


【成長期】
「需要が増えれば」 その市場規模は更に増大していきます。
この段階では、新規参入者が増加します。理由は「市場と成長していて魅力があるから」です。
各参入者は「仕事量=売上」を増やそうと、価格・サービス競争が激しくなります。
現在では「IT市場」はこのポジョションにあります。世の「デジタル化ニーズ」を受け、これからも更に伸びていくことでしょう。


【成熟期】
市場成長のピークを越えると、市場の伸びが鈍化していきます。
消費者の商品・サービスへの理解度も上がり、要求される品質レベルも一定となります。
競争関係も落ち着き、新規参入者はほとんど無くなります。この段階では、購買時に選ばれる商品は、ある程度固定化されます。「同じ相手・同じ商品での取引が多い状態」になります。


【衰退期】
市場の成長が止まり、減少・衰退していく段階を向かえます。
ここでは、各事業者の売上・利益もピークから減少に転じます。
「いろいろ取り組んでも、なかなか売上が伸びない、下がっていく」という状況になります。
この時期には、事業者の撤退が増えていきます。


■ 市場の変化は、なぜ起こるのか

なぜ、市場の変化が起こるのか、市場に影響を与える要素を下記に示しました。

大きな部分ではマクロ環境、各業界・業種ではミクロ環境、その変化がビジネスへの影響を及ぼします。その中でも、全般と消費者の購買行動の観点で整理すると、主には下記がポイントです。


<全般への影響>
■ 所得が増減する。可処分所得が増減する
→ 消費レベルに影響する
■ 物価の上昇・低減
現在:原料価格の上昇→商品へ価格転嫁、ガソリン価格の上昇→輸送費の値上げ
■ 一時的に需要が増大・供給不足になる
現在:半導体の不足→製品製造への影響
■ 行動に制約がかかる(コロナ感染防止)
→ 消費レベルに影響する


<消費者の購買行動に関わる影響>
■ 新商品・新サービスが普及する
(価値が高い)
■ 代替品・代替サービスの利用が増えたことで既存品が不要になる
■ 利用による優遇措置が受けられる
(エコカー補助金など)
■ 単純に商品が飽きられる
(商品価値の陳腐化)


商品は、ある日突然、必要になったり、不要になったりすることがあります。
2つの例でみていきます。


例1 技術革新の影響:レコードの商品価値
過去に存在したレコードは分かりやすい例です。レコードは音源の記録方式の一つでした。
しかしながら、記録方式の主体はCDに変わり、現在ではデジタル媒体へと変化しています。
20年ほど前に著作権の問題がクリアされ、ネット音楽配信サービスも始まり、いまでは音源提供の主体になっています。「技術革新で画期的な商品が発明されると、それまで必要とされていた商品が無価値になる」ということです。ここでは、レコード需要の消失が起こりました。
こうなると、レコードプレーヤーとレコード販売業者が不要になります。
現在ではレコードは製造そのものがありません。中古品が流通している程度です。


例2 コロナ感染拡大の影響:マスク需要の増加
2020年春先から、コロナ感染防止のため、個人ごとマスク着用が必要になりました。
個々の感染防止への意識が高まり、生活必需品として欠かせないモノとなりました。
需要が急激に増加し、販売店での品薄・欠品が続きました。
※需要増加に対し供給不足の状態
このとき、既存業者ごと供給力の増強(工場のライン増)もありましたが、新規業者の参入が多くありました。ネットで高値で転売する業者も現れました。
大手のユニクロも後発で参入し、現在では、価格・供給量も安定しています。


■ 需要・市場分析/例

過去に、マーケティング会社での仕事で「白物家電の需要動向調査」を担当しました。
市場分析の参考例として、その調査の抜粋、白物家電の需要・市場の特性を示します。


【需要・市場の特性】
■ 白物家電:エアコン・冷蔵庫・洗濯機など
■ 日本市場は、主に「買替需要サイクル」で成り立っている
■ 買替需要のサイクル 5~10年 国内でもエリア差がある
■ 国内販売の製品 日本仕様を基準として製作。
■ 日本仕様の製品は、日本では売れても、ヨーロッパでは売れない。
日本仕様の製品は「機能性へのニーズ対応に傾く傾向が強く、オーバースペックになりがち」
⇒ ヨーロッパの製品ニーズは「シンプルな機能、使い易さ、耐久性」の方が高い。


【白物家電の購買動機/タイミング】
■ 所持している製品が古くなった
■ 所持している製品が故障した
■ 新しい製品が出た(買替)
■ 便利な機能がついている製品が欲しくなった(買替)
■ 引っ越しの機会での買替
■ 家族が増えたことで必要になった(買替or追加)


【製品ニーズ/当時】
■ 省電力
■ 操作のし易さ
■ 時間短縮=スピード
■ 壊れにくい
■ 見た目がよい
■ 機能性
■ 動作音が静か
■ 価格の設定レベル(適切性)


こんな感じで、製品分野ごとに需要・市場特性があります。
また、消費者の購買動機やニーズは一定ではなく、常に変化します。

■ 需要×市場の変化、ビジネスとの関わり

今後の需要・市場の変化・予測において、多くの産業への影響度が高い要素で、主なモノをまとめました。


【社会】
■ 総人口の減少
〔2021年〕1億2,610万人
→〔2048年予測〕9,900万人
■ 少子・高齢化
〔2019年〕総人口 1億2,617万人
15齢未満 1,541万人〔12.2%〕
65齢以上 3,589万人〔28.4%〕
〔2045年予測〕総人口 1億642万人
15齢未満 1,138万人〔10.7%〕
65齢以上 3,937万人〔37%〕
■ 労働人口の減少
〔2021年〕6,860万人
→〔2040年予測〕5,200万人
■ コロナ感染の継続 〔2020年~現〕
→ 行動制限


【政治・経済】
■ 政治の影響(国として経済・産業への未来展望があるか)
■ 規制の強化 or 緩和
例〕遊技機の規制強化
■ 購買行動の変化(コロナの影響)
■ 原材料の高騰 → 物価の上昇


【需要】
■ 人口減少に伴う総需要減
■ 外需の増加
例〕観光需要/外国人観光客の増加
※現在は制限
■ 環境影響による需要の変容
例〕外食減 → 内食増(コロナの影響)


【技術・サービス】
■ デジタル技術・サービスの進化と一般化(浸透)
■ 代替技術・代替サービスによる需要の変容
■ 各業界/IT技術導入の進展、ビジネスプロセスの変化
■ ガソリン車 → 電気自動車・燃料電池車へシフト
2030年代中盤:ガソリン車 販売禁止の可能性 ⇒ 関連事業者に大きな影響


現在の日本は人口減少の段階に入っており、国内需要は年々減少している状況です。
それに加え、コロナ問題の長期化が需要・市場に影響を与えています。

その中でも飲食業は、大きな影響を受けています。
感染拡大防止のため「個人への行動制限」がかかり、利用者が激減しました。
飲食事業者の独自調査では 「仮に2022年内にコロナが終息しても、2023年の客数はコロナ前の7割程度」という結論が出ています。営業自粛・行動制限によって、飲食の利用習慣が変化したのは確実であり、ほぼ予測通りになると思います。
外食のワタミでは、既存店の閉店と業態転換を急速に進めています。(居酒屋/現270店 → 2023年末までに80店を閉店)
需要そのものが変化し戻らないのが確実なら「事業規模の縮小へシフト」という判断・選択になります。
このような飲食チェーン事業者は、まだまだ増えると思います。

飲食チェーンの事業の特徴は「出店増により業績を伸ばす」です。(これまでは)
各飲食チェーンは店舗数の規模拡大で「市場における認知度を高め、集客力を上げる」という側面もあったと考えます。
ただ、疑問なのは「総人口減少⇒総需要の減少」が進んでいるのに対し「なぜ店舗数を増やしていくのか」という事でした。
おそらく「業績を伸ばすこと」に傾倒し、「需要の減少推移は理解しつつも、独自の競争力強化で対応する」という方針であったと推測します。
よく「飲食の競争激化」という言葉を耳にしますが、実際は「過度の競争状態、オーバーストアの状態」でした。
ただ、この状態が続けられるはずもなく、いずれ各飲食チェーンは「規模縮小(適正規模)に舵を切らざるを得ない」と考えていました。
皮肉にも「コロナがその問題を鮮明にし、早期の方向転換を余儀なくした」と考えます。


反面で、需要が増加したものがあります。
コロナに端を発し、非対面・非接触ビジネスのニーズが増加しました。
テレワーク増加により、2020年のパソコン出荷台数が過去最高になりました。
それと同時に周辺機器の出荷も増えています。
政府もIT導入補助金で「企業のIT化を支援」しています。
IT化の支援には
労働人口減少( = 企業の働き手の減少)⇒ 業務の少人化・効率化に対応生産性の向上」という目的もあります。
企業には様々なITニーズがあるため、しばらくの間、IT需要は継続的に増加していくことが見込めます。

■ これから

いま最も注目されるのは
「コロナの終息後、世の中はどう変化するか」
ココが最大のポイントです。
世の中全体では「消費の傾向・習慣が変化したこと」が影響度として最も大きなポイントです。
それがコロナ以前のレベルに戻るには、数年程度の期間がかかると思います。
(そのまま「当たり前のレベル→定着」もある)
消費の傾向は、すべての産業に影響します。

いま現在は、自分が生きてきた50年でも経験したことが無い「広範囲で複雑な変化」が起こっており、「時代の大きな変わり目」と言ってよいと思います。
企業の継続には「環境変化への適応」は必須です。
そのためには「需要と市場の変化を予測し、ビジネスに活かす〔機会の獲得、脅威の回避〕」が原理原則であり、これからも絶対に必要です。

▶ 株式会社シーアークス